男性不妊検査について
不妊の原因は男性と女性は50:50でまったく同じ確率で起こりうることです。
よって、不妊治療を行うにあたり、男性も検査を受けて頂くことになります。
男性の場合は比較的簡単で、「精液検査」がメインの検査になります。
この検査により、きちんと精子は存在しているのか?そして精子は運動しているのか?精子の奇形率はどれくらいか?といった妊娠に関わる精子の状態を把握致します。
将来的に子どもが欲しいと思われている方で一度も精液検査を受けていない方は一度検査しておくべきものだと思われます。
早めに精子を調べておくことによるメリットは下記の通りです。
1) | 自分の精子に妊娠させる能力があるかどうかを把握できる |
2) | もし精子に問題が見つかった場合、早く治療が開始出来る |
3) | 避妊や妊娠について自分自身、意識することにより深く知ることが出来る |
4) | 不妊治療を夫婦で行う場合、やる気を奥さんに伝えることが出来る |
5) | 生活の不摂生やストレスの状況も精子の状況から振り返ることが出来る |
検査方法
一般的に精液検査は、通常3~5日間の禁欲後に行います。検査不良例では体調面などの影響がありますから、2~3回行って総合的に判断します。
精子の採取法は、用手法(マスターベーション)により専用の容器に採ります。通常は院内に採精室がありますのでそちらで採って頂くことになります。
自宅で採る場合は2時間以内に身体の近いところで温めながらクリニックに持って行きます。(36~37度で活発に動くので低い温度になると運動率が下がるためです)
精液検査の基準値
実は、日本人男性の精液所見の平均値(正常値)というのは分かっていません。それは、普通に妊娠した男性は精液検査を受けることがないからです。
以下の精液検査の基準値はこの数値を上回らないと妊娠が難しいと考えられるレベルを示したものです。
(WHO 2010年の基準) | ||
精液量 | : | 1.5ml以上 |
総精子数 | : | 3,900万個以上 |
精子濃度 | : | 1ml中に1,500万個以上 |
総精子運動率 | : | 40%以上 |
全身運動率 | : | 32%以上 |
精液所見による診断
正常精液 | : | 総精子数が3,900万個以上、前進運動精子が32%以上、形態学的に正常精子が4%以上 |
乏精子症 | : | 総精子数が1,500万個未満 |
精子無力症 | : | 精子運動率が32%未満 |
奇形精子症 | : | 形態正常精子が4%未満 |
無精子症 | : | 射精液中に精子が無い |
1回の精液検査の結果だけで判断できない精液検査
日本泌尿器科学会のガイドラインによりますと、禁欲期間を2日以上7日以内としています。これは、禁欲期間が長くなると精子濃度が高くなるからです。また、診断のためには、2~3回の検査を実施すべきとしています。
1ヶ月以内に2回行い、2回の結果に大きな違いがある場合は、さらに、3回目の検査を行うとしています。2回の場合は平均値を、3回以上検査を行った場合には中央値を採用するべきとしています。これは、男性の精液の状態はその時々で大きく変動するからです。
たとえば、国際医療福祉大学の岩本教授らのグループが、20~22歳の男性4名を対象に、1年間に渡って、毎月1回精液検査を行っています。その時々の精子濃度は大きく変動しており、4名のうち3名は12回の検査のうち1回以上、精子濃度の基準値を下回っていたという結果も出ております。
よって、一回の検査で一喜一憂するものではないとご理解いただければ幸いです。