当院では最新の高度生殖医療を実施しております。そのメインとなる治療法が体外受精と顕微授精です。その2つについて解説してまいります。
体外受精とは?
排卵前に卵巣から卵子を回収(採卵)し、スイムアップ法で処理をした精子と合わせて(媒精)、受精させます。体外で受精・培養し、後日、受精卵(胚)を体内に戻し(移植)妊娠を目指します。
顕微授精とは?
採卵で採取した卵子の細胞質内に、1個の精子を注入して授精させる方法です。 精子の数が少ない・運動率が低いなどの精液所見に異常がある場合、凍結精子を使用する場合、体外受精では受精卵が得られない場合は顕微授精を行います。
刺激法や採卵は「体外受精」と同様です。 |
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顕微授精の様子 |
体外受精・顕微授精の適応について
日本産婦人科学会の見解(2006年)
体外受精・胚移植:「体外受精・胚移植は、これ以外の治療によっては妊娠の可能性がないか極めて低いと判断されるもの、および体外受精・胚移植を施行することが、被実施者またはその出生児に有益であると判断されるものを対象とする」
顕微授精・胚移植:「顕微授精は、男性不妊や受精障害など、顕微授精以外の治療によっては妊娠の可能性が極めて低いと判断される夫婦を対象とする」
適応されるケースは下記の通りです。
1) | 卵管性不妊;両側卵管閉塞、卵管采周囲癒着など |
卵管に通過できない場所があれば、精子と卵子は出会えません。よって卵管形成術をしても妊娠しないか、手術での卵管形成が期待出来ない場合に適応となります。 | |
2) | 男性不妊;精子数が非常に少ない、異常精子が多い |
総運動精子数が1500万個以下の場合は、性交や人工授精では妊娠しにくいと言われています。その場合、体外受精が適応となります。特に精子が少ない場合や運動率が低い場合は顕微授精の適応となります。 | |
3) | 免疫性不妊;抗精子抗体陽性例など |
女性側に抗精子抗体が見つかり、性交や人工授精での妊娠がうまくいかない場合、適応と考えられます。 | |
4) | 原因不明不妊 |
原因不明の不妊や性交や人工授精で妊娠しない場合、妊娠に至る過程に問題があると考えられます。体外受精ではこの過程の一部をスキップして着床前の段階まで見届けることができるので、適応となります。 | |
5) | 子宮内膜症や多嚢胞卵巣症候群(PCOS) |
子宮内膜症でタイミング療法や人工授精で不成功の場合や、多嚢胞卵巣症候群のために過剰卵巣刺激症候群(OHSS)や多胎となるリスクが高く、体外受精を行うことによってリスクが回避できる場合などは、適応となります。 | |
6) | 不妊治療を急ぐ必要がある場合 |
普通はある一定の手順を経て体外受精へ移行することが多いのですが、場合によっては一気に移行することも必要です。最も多いのは高齢のケースです。 |
採卵までの主な流れ
月経3日目に採血と超音波を行い、ホルモン値(E2・LH・FSH)と卵巣の状態を確認します。この結果により刺激法を決定します。この際、患者様のご希望も考慮しています。
体外受精の周期では、卵巣を刺激して複数個の成熟卵胞を発育させます。
ただ、卵巣刺激をしても効果が期待できないこともあるので、薬を使用せず発育を待つ場合もあります。
当院での刺激法は個別の状況に合わせ、下記の通り行います。
★自然周期・・・・薬を使用しない |
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月経7~8日目に卵胞の発育状態を確認します。14mmを超えるとその後は毎日診察となり、16mmを越えると採血でE2・LHを測定していきます。 | ||||||||
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成熟卵胞と判断されたら採卵日(通常、2日後)が決まり、hCG注射やブセレキュア点鼻で排卵を誘起します。 | ||||||||
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~採卵~ 局所麻酔で行い、数分で終了します。痛みの程度には個人差がありますが、細い針を使用するので軽度の痛みで済むケースがほとんどです。 採卵後は2~3時間休憩していただき、診察をしてから帰宅となります。 診察時に、胚移植か胚凍結かを決定して日程を組みます。 |
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胚移植について
体外受精や顕微授精で得られた胚の中から質のよいものを選び、カテーテルという軟らかいチューブを用いて子宮内に戻します。
4~8分割の初期胚(採卵後3日目頃)か、胚盤胞(採卵後5日目頃)を移植します。
移植当日の流れ
電話で、移植可能な胚になっているかを確認してから来院していただきます。
尿が溜まった状態で、お腹の上から超音波で子宮を確認しながら移植します。
尿を溜めて来院してください。
尿が溜まらない場合は、腟から超音波で確認することもあります。
移植後は寝たまま15分安静をとります。その後、部屋を移動して30分休憩していただき、帰宅となります。
※当院では産婦人科学会の見解を遵守し、多胎妊娠をできるだけ防ぐために、戻す受精卵は原則1個としています。