クラミジア感染症について
クラミジアは細菌に分類される小微生物(直径300~1000nm・ウイルスより少し大きい)で、グラム陰性細菌に類似した微生物です。クラミジアは特異な増殖形態を持ち、人の細胞に感染すると細胞内に進入し、細胞質内で分裂増殖を行います。
48~72時間程度かけて増殖したクラミジアは細胞を破壊して細胞外へ放出され、外へ出たクラミジアはほかの細胞へと入り込み、さらに増殖して繁殖していきます。
なお、クラミジア属にはpneumoniae / psittaci / pecorum / trachomatisなどの種類がありますが、性感染症の原因となるものはtrachomatis(トラコマーティス)のみとされています。
-
クラミジアと不妊症の関係
女性がクラミジアに感染した場合は体の構造により感染が速やかに上腹部へと浸透していき、短期間に腹腔内へ及ぶ恐れがあります。
感染初期には自覚症状がない場合が多いため、気付かないうちに長い時間をかけて骨盤腔へ及び、卵管閉塞や卵管周囲癒着を引き起こして不妊症の原因になる傾向があります。
女性不妊症患者さんの所見をみると、クラミジア抗体陽性者の半数以上に卵管周囲の癒着や卵管閉塞があるといわれます。また、妊婦に感染するとプロスタグランジンを活性化させて陣痛を誘発するため、妊娠初期では流産、妊娠中期では早産の原因になります。 -
クラミジアの検査とは?
検査方法にはクラミジアを直接検出する「抗原検査」と間接的に調べる「抗体検査」の2つがあります。前者はクラミジアの病原体の一部を検出する方法で、結果が陽性であればクラミジアが存在していることを意味します。抗原検査は子宮頸部や尿など実際に罹患した部位から検体を採取できる場合に限って実施できます。
一方の抗体検査は血液検査によって「抗体」の有無を調べるものです。抗体とは細菌などに感染した際に体が作り出す免疫のことで、この抗体があるかどうかによって感染の有無を判定します。
子宮頸管に感染したクラミジアは徐々に体の上のほうに移行するため、頸管部の抗原検査では検出できない場合があり、判定がより難しくなります。このため当院では抗体検査をメインに実施しています。 -
クラミジア感染症の治療
男女ともにクラミジア感染症に有効な抗生物質を7~14日間服用します。炎症がひどくて腹痛や発熱がある場合は、点滴による治療が必要になることもあります。治療後は再度検査を行い、結果が「陰性」になっていることを確認できれば完治となりますが、「陽性」が出た場合は抗生物質の種類を変えて結果が「陰性」になるまで治療を行います。
パートナーがいる場合は2人で同時に治療することが重要です。どちらか一方のみが治療を行った場合は、一度治っても再び性交渉を行うことで未治療のパートナーから再度感染し、いつまでも完治しません。 -
クラミジア感染症にならないために
クラミジア感染症にならないようにするためには、いくつかのポイントがあります。クラミジアに感染しても自覚症状がない場合があるため、まずはかからないように工夫することが大切です。またクラミジアに感染した場合には早期発見・早期治療が必須です。- 1)コンドームの使用
- 2)パートナーの固定化(安全なパートナーとだけ性交渉する)
- 3)「感染の可能性が高い」と考えられる場合は早めに検査と治療を行い、その後も定期的な検査を心がける