子宮筋腫とは?
子宮筋腫(しきゅうきんしゅ、uterine fibroids)とは、子宮の筋層に存在する平滑筋細胞由来の良性腫瘍である。生殖年齢の女性のうち20%の割合で発生する。30~40代によく起きます。
子宮壁を構成する3つの層における存在部位によって
粘膜下筋腫(子宮腔内)
筋層内筋腫(子宮壁の筋肉の中)
漿膜下筋腫(子宮の外側)に分類されます。
また、子宮頸部の位置にできるものは頸部筋腫と呼ばれます。
半数以上の子宮筋腫が多発性(複数の塊が発生)です。
子宮筋腫はエストロゲン依存性良性疾患であるため、閉経後は縮小するので、外科的な処置をしないことが多い。エストロゲン依存性の疾患として、ほかに乳腺症、乳癌、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮体癌などが知られている。
特に子宮内膜症と子宮腺筋症の合併例は多く、月経困難症の合併をみることがある。子宮内膜症の合併は約20%である。
症状は?
筋腫ができる場所や大きさによって症状の出方は異なります。
1) | 過多月経・過長月経 |
子宮筋腫で自覚症状がある場合に一番多いのは、過多月経や過長月経です。 ひどいとナプキンが1時間持たなかったり、貧血が進みすぎて輸血が必要になることも。月経の量が多く期間も長いため、貧血になってしまうケースもあります。 月経量は人と比べることができないため、本当は過多月経なのに自分では異常に気づかず放置してしまうこともあるようです。 |
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2) | 自覚症状がないケース全く症状がなく、検診でたまたま筋腫が発見される人も少なくありません |
3) | 下腹部のしこり |
筋腫が握りこぶし以上の大きさになると、自分で触っても下腹の辺りにできたしこりがわかることがあります。 |
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4) | 頻尿・排尿以上・便秘 |
子宮の前には膀胱があるので筋腫が膀胱を圧迫してトイレが近くなったり、逆に尿がスムーズに出せなくなってしまいます。周りの腸を圧迫すれば便秘になります。 |
検査・診断について
子宮筋腫の検査で最も活用されるのが超音波検査です。おなかの表面に器具を当てて子宮や卵巣から跳ね返ってきた超音波を画像にする場合、経膣エコーとして中から超音波を当てる場合があります。
これ以外の子宮筋腫の検査の方法としては、内診、画像診断、細胞診、血液検査があります。
内診とは、膣内とおなかに手を当てて子宮の大きさや形、表面の状態や硬さを調べる方法です。画像診断とは、CT検査やMRI検査によって、筋腫の大きさや細かい状況などを調べます。
細胞診では、子宮頸部の細胞をこすり取って行います。癌の疑いがないかも調べることができます。血液検査では、ホルモンバランスや貧血ではないかが分かります。
治療の必要性について
子宮筋腫が発見されたからといって、必ずしも治療が必要とは限りません。症状も全くなく、大きさも10cm以下で妊娠も望んでいない場合、通常は半年~1年に1回超音波検査で大きさの変化を見るだけになります。
どんどん大きくなっているケースでは途中で手術を勧められることもありますが、閉経までただ定期検査を受けるだけという人も少なくありません。
筋腫は女性ホルモン(エストロゲン)の働きによって大きくなっていくので、閉経までは大きくなる可能性があります。
しかし閉経後は大きくなることはなく、むしろ徐々に縮んでいくので、閉経まで持ち越せれば、それ以降治療が必要になることはめったにありません。
筋腫で治療が必要になるのは、主に次のようなケースです。
1) | 妊娠を望んでいて筋腫が妊娠の妨げ、または流産や早産のリスクになる場合 |
2) | 過多月経や月経痛の症状がひどい場合 |
3) | 大きさが大きい。またはどんどん大きくなっている場合 |
4) | 大きさが大きく、子宮の周りの臓器への圧迫による症状がひどい場合 |
不妊治療の場合は1)のケースで治療することが多いということです。ただ、治療するにしても手術を選択する場合は手術をすることも子宮に負担をかけるし、そのまま筋腫を置いておいても負担がかかるという状況なので、医療者側としては悩ましい状況になることもあります。
子宮筋腫の治療法
1) | 薬物療法 | ||||||||||||
子宮筋腫の発育因子となるのは女性ホルモンです。 治療期間はおよそ半年間ですが、筋腫に劇的な縮小は期待できません。ひとまわり小さくなれば良い方であり、現状維持に終わることも少なくありません。治療期間中は不妊治療ができないため、効果がなければ時間のロスになります。 未婚や妊娠を希望していない場合には、試してみて良い方法です。 |
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2) | 手術療法 | ||||||||||||
不妊原因となっている程度の子宮筋腫の治療法として有効なのは子宮筋腫核出術です。 |
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手術の方法
手術には従来から行われている開腹術の他に腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術があり、それぞれに長所と短所があります。
■ | 腹腔鏡下手術 |
腹部に複数の穴を開けて、そこからカメラや鉗子を挿入して行う手術。 |
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■ | 子宮鏡下手術 |
お腹を切ることなく、膣からカメラを子宮内に挿入して行う手術。 |
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■ | 開腹術 |
従来から最も多く行われている術式。手作業であるため緻密な手術ができる。お腹に傷が残ります。 開腹術か腹腔鏡手術、子宮鏡下手術かの選択は、筋腫の大きさと数、場所、病院の設備、術者の技量により決まります。一概にどれが良いとは言えません。 美容的な面では腹腔鏡手術が優れていますが、核出術を行った後の妊娠では、分娩は帝王切開術となることが多いので、結局お腹に傷が残ります。 |
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■ | 動脈塞栓術(UAE : Uterine Artery Embolization) |
近年、手術をせずに筋腫サイズを縮小する方法として注目されています。 カテーテルで子宮への動脈を塞栓して血流を途絶えさせ、筋腫を縮小させる方法です。感染症や子宮の壊死といった大きな合併症があるため、妊娠を希望する人には原則として選択されません。 |
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■ | 集束超音波治療(FUS : Focused Ultrasound Surgery) |
2000年頃から始まった子宮筋腫の新しい治療法です。数百本の超音波ビームを1点に集中させ、その熱で筋腫を焼灼させます。 非侵襲なので術後の回復が早く、貧血やホルモン治療中でも、治療が可能というメリットがありますが、自費のため治療費が高く、時間がかかること。そして、まだまだ導入している施設が少ないゆえに症例数が少ないので実用的になっていないのが現状です。 |
不妊症と子宮筋腫について
子宮筋腫を持っていても自然に妊娠出産される方も多く、必ずしも皆が不妊症になるという訳ではありません。一方、不妊原因となっているのが明らかな場合には、自然妊娠は期待できないため何らかの加療が必要となります。
しかし子宮筋腫が不妊原因になっているかの判断は難しいことも多く、その対処法は各人で異なります。
子宮筋腫が不妊原因となるのは以下の場合です。
1) | 卵管口や卵管圧迫によって精子や卵子の通り道がふさがれる |
筋層内筋腫や粘膜下筋腫では、存在する位置するによっては卵管を圧迫することがあります。 卵管は精子と受精卵の通り道であるため、これが圧迫されれば、卵管性不妊となります。手術によって子宮筋腫を取り除いて通路を確保するか、あるいは体外受精を行わないと妊娠に至りません。 |
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2) | 子宮内膜圧迫による着床障害 |
粘膜下筋腫は子宮内膜の下にいるために子宮内膜に大きな影響を与えます。特に卵子の育つ内膜環境に悪影響を与えるために着床を妨げてしまいます。また、着床してもキープできず、流産の原因になってしまいます。 こうなるともはや体外受精を行っても解決することはできませんので、手術によって筋腫を摘出するしか方法がありません。しかし内膜というデリケートな組織に埋まっている筋腫を取り除くことは容易ではありません。 筋腫が大きく、子宮内膜を広範囲に圧迫している場合には、取り除いたとしても内膜が元通りに治らない場合もあります。 |
子宮筋腫が不妊の原因となっているかの判断は、1)の場合は子宮卵管造影検査、2)の場合は子宮卵管造影検査およびMRI検査によって診断されます。
しかし実際には白黒判然としない例も多く、こうした場合には実際に不妊治療を行って、妊娠するかどうかで判断を行うこととなります。妊娠できない場合には、筋腫を不妊原因と見なして治療法を検討することになります。